ADコンバーターの自作 PCM4222編 ~低ノイズの限界に迫る~

これまでにすでに2つのADコンバーターを製作したのですが、実はその2つともに「右チャンネルにかなり大きめのノイズが載る」という問題を抱えていました。もちろん耳で聞こえるほどではなく、PCに取り込んでFFTを表示させて初めてわかるレベルです。

1つ目はこのBlogにもあるPCM1804使用ADコンバーターです。核となるADコンバーターにはデジット製のキットを使用しています。いろいろ実験を繰り返したのですが、自作したアナログ入力基板(不平衡→平衡変換とローパスフィルタ)をつながなくてもノイズが載るので、結論としてこの基板そのものに問題があると言わざるを得ません。もともとアナログ・デジタル部分の電源やグラウンドの分け方も大雑把なので、あまり音質に気を使った設計ではなかったようです(商品説明にも「実験基板」と書いてあるし)。確かに主要部品はほとんどはんだ付け済みなので、コネクタをはんだ付けしほかの基板と組み合わせるだけで自作できるのは助かるのですが…。

もう一つは実はある意味半分出来合いで、TOAのデジタルミキサーの部品としてこれが近所のリサイクルショップで350円で売られていたので、回路を解析したうえで電源、デジタル出力→SPDIF変換、クロックなどを足したものです。プロ用ミキサーの部品なので、ノイズなどは信頼していたのですが、出来上がってから測定してみたところ、なんとこれにも右チャンネルだけノイズが載ることがわかりました。ADコンバーター半導体(旭化成AK5393)のアナログ入力をショートするとノイズが消えるので、どうもアナログ増幅・平衡変換回路の設計に問題がありそうです。ちょっとがっかり。でも350円では仕方がないか…。

実は、二つとも基本的に実際の使用には問題はなく、なぜならホールや収録会場の背景ノイズはこの2つのADコンバーターが出すノイズよりはるかに大きいからです。でもなんとなく気になる(笑)。

そこで、今度は限界までノイズが少ないADコンバーターを何とかして作ってやろうと思い立ち、ネットを探しまくっているとここにたどりつきました。その筋では有名な方で、作ったAD/DAコンバーターの数や内容もすごいし、また作った基板を主要部品込みで頒布もしてもらえるということで、早速唯一のADコンバータ制作例としてあったこれを申し込みました。

送られてくるものは基本的に主要部品 – ADコンバーター半導体やSPDIF出力変換 – と基板なので、それ以外のアナログ部品などは自分で調達する必要があります。今回はとことんハイエンドを目指すので普段は買わない高精度抵抗やオーディオ用コンデンサなどを試してみることにしました。

製作途中に誤って高い電圧をかけてSPDIF変換チップを「焼いて」しまったのは秘密…(笑)

主となるADコンバーターICは0.65mmピッチのICなので、半田付けが大変です(笑)
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一通り組みあがって、意気揚々とノイズ測定。すると…50Hzの倍数でかなり大きめのノイズが。こいつは良く見知っているやつです。「電源ノイズ」もしくは「ハム」といいます。かなり注意深く電源を作ったはずなんですが…。逆に対策が思いつかず、たまたま中古で買ってあったあまり見ない(だから買ったんだけど)3出力のスイッチング電源が見つかってしまった(笑)のであっさりそれに乗り換えることにしました。オーディオにはスイッチング電源はご法度とされていますが…(でも音楽制作機器にはふつーに使ってるよなー)。

デジタル音響機器を作る楽しみの一つは「オペアンプを選ぶこと」です。巷のオーディオ雑誌などではスピーカーケーブルに凝ったり、それこそ電源コネクタやコンセント(壁のほう)を変えたり、最近はLANケーブルやUSBケーブルにとても高い投資をしてみたりしているようですが、オペアンプを変えるとそれらと比較にならないぐらい音が変わります。実際の測定グラフにも即座に違いが現れます。今回は、定番(普及型 – 中級までのオーディオ機器はみんなこれ。激安なのに結構高性能)のJRC NJM4580DDをリファレンスとして、

NJM2068DD → NJM5532DD → NJM2114DD → LME49860 → OPA2604

と辿って、最終的にOPA2134PAに決めました。ノイズ、歪率とも試した中ではこれがベストでした。1個200円と決して安くない上に4個も必要なのでちょっと値が張りますが、史上最強スペックを目指すため仕方ありません。ちなみにこのオペアンプというやつ、高いのは3,000円を超えます。さすがにそれは買えない…。

電源も、もともとの頒布部品の中ではレギュレーターICでADコンバーター用アナログ電源(4V)を作っていましたが、ここが経験上一番ノイズに効くので、低ノイズ電源レギュレーターをおごりました。

他にも細かい工夫を何点か加え、最終的に得られた測定結果がこれ。

ADC4222_noise

前に作ったADコンバーターのグラフとは実はレンジが1つ広がっています。単純比較で20dB、電圧に換算するとノイズは(ノイズが少なかった左チャンネルどうしの比較で)実に1/10になりました。これは驚くべき結果で、市販のかなり高価なADコンバーター機器の測定結果を余裕で上回ります。取り込める音の強弱の最大は24bitなので理論上144dBですが、もしその「最小の音」でもノイズに埋もれずここに「見える」計算になります。

もちろんノイズだけが「音質」のすべてを決めるわけではありませんが、ただ取り込んだ後加工することが多いADコンバーターの出力はできるだけ低ノイズであってほしいのも事実です。実際に聴いた感じでも「静寂」がまずあって、そこから音が浮き上がってくるイメージです。なかなか得難い体験です。

市販品にも「もっと使い勝手のいい」ADコンバーター、あるいはオーディオインターフェースはたくさんあるのですが、自作する以上はこのぐらい一点だけにこだわってもいいのかな、と思います。

(本体内部)

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[追記 – 2015/6/24]

クロックの精度が心配だったので、いつものようにNHK AMラジオを3時間録音して、時報の間隔が収録データと実時間であっているかどうか確認したところ、
– 3時間収録で 0.096秒のずれ
でした。PPM(1/100万)にすると約 8.4PPMで、一般的な水晶発振器の精度(50PPM)と比較しても良いほうですが、発表会は長時間収録、かつビデオと同時に収録するため、3時間で約3フレームのずれだと普通にわかってしまいます。これではちょっとしんどいので、旧ADコンバーターから発振器周り(1PPM発振器+PLL)を移植し、結果
– 3時間収録で 0.005秒のずれ
にすることができました。このくらいだとよほど耳がよくなければ判別できないと思います。

せっかくなのでRMAAというオーディオアナライザーで特性を測定してみました。とはいっても再生側はTASCAM US-366なので、そちら側の再生特性にも足を引っ張られてしまいます。そこで、比較のためにUS-366だけの場合も測定してみました。

US-366+自作コンバーター
US-366のみ

結果は…全然違いますね(笑) 自作コンバーターの測定値で唯一”Good”だった歪+ノイズは、US-366が再生時に出している可能性が大です。ということは、まともなDACも作らなければ、ということですね…

空撮訓練中

時流に乗って、というよりはどちらかというと何度かチャレンジして挫折していた「ラジコンヘリの操縦、とそれによる空撮」に対するリベンジの意味合いのほうが強いのですが…


そのうち空撮も請け負うことができるでしょうか?
鋭意練習中ですが、人のいるところでは原則飛ばしていません。また損害賠償保険には加入済みです。